賃貸物件を探していると、フリーレントという物件を目にしたことがある人もいるでしょう。フリーレントとはどのような物件を指すのでしょうか。この記事では、フリーレントの言葉の意味がわからず、今まで知ろうとしなかった人や、何となく敬遠していた人に向けて、言葉の意味や増えている理由、借りる側と貸す側お互いのメリットや注意点などについて説明します。

そもそもフリーレントとは?

フリーレント(free lent)は、直訳すると「ただで貸す」という意味があります。賃貸住宅のフリーレントとは、定められた期間の家賃を無料にする契約のことです。家賃が無料になる期間は物件によって異なり、数日の場合もあれば数カ月に及ぶこともあります。たとえば、新大学生が4月から入居する賃貸アパートなどを2月頃に契約したとしても、正式に住みだすのは3月中旬以降か4月の上旬になるでしょう。その間の3月末までをフリーレントとすることがあります。また、月の終わり頃の入居の場合、日割り家賃とせず、大家さんの好意でフリーレントとすることもあるでしょう。

そのようなサービス的な意味合いのフリーレントとは別に、入居者募集時に戦略的にフリーレント期間を1カ月や数カ月などと設定している場合もあります。フリーレントの期間満了後は、決められた月額の家賃を支払うことになります。昔は法人契約の事務所や店舗などでフリーレントが多く行われていましたが、近年では居住用の物件でも多く見かけるようになりました。

フリーレントの物件がある理由

フリーレントは賃貸住宅を借りる側にメリットが大きいように感じますが、貸す側にもそれなりのメリットがあります。双方にメリットがあることが、フリーレント物件が増えている理由でもあるのです。ここでは、フリーレントにするメリットを借りる側と貸す側それぞれの視点で説明します。

フリーレントの物件を借りる側のメリット

まずは、借りる側から見たフリーレントにするメリットについて説明します。

賃貸物件を借りるときの初期費用を抑えられる

賃貸物件を借りるときには、家賃以外に、敷金や礼金、新生活のための家具や家電の購入費用などで一時期にかなりの出費があるものです。遠方からの引っ越しの場合や、運ぶ荷物がたくさんあるときは、引っ越し費用もかなりかかるでしょう。敷金は、賃貸物件を退去するときにある程度は返ってくるものの、契約時に不動産会社に支払う初期費用は、仲介手数料や保証会社に支払う手数料なども含めると、家賃の5~7カ月分とも言われています。引っ越しの運送料以外にそれだけの費用を一度に支払わなければならないため、ある程度金銭的に余裕のある人でなければ簡単に引っ越しもできません。

初期費用を全額揃えることが難しいため、希望の物件よりもグレードを落として物件を探す人もいるでしょう。その点、フリーレント物件なら、家賃が無料になる期間があるため、引っ越しの際の初期費用をある程度抑えることが可能です。そのため、予算が少なくても賃貸物件を借りられますし、グレードを上げた物件も視野に入れて物件を探すこともできるでしょう。いずれにしても、フリーレントで初期費用が抑えられますし、賃貸物件の選択の幅が広がることは大きなメリットです。

賃貸物件から賃貸物件に引っ越すときの2重払いを防げる

賃貸物件に住んでいて、次の契約更新をせずに、他の賃貸物件に住み替える場合もあるでしょう。良い物件が見つかったときは、他の借り手がつく前に申し込みをして正式に契約する流れが多くなります。ただし、その場合、新たに契約した新居の家賃が発生するため、一時的に家賃を2重に支払う必要があるのです。しかし、新居がフリーレント物件なら、家賃の2重払いを回避することができます。家賃が無料のうちに余裕をもって引っ越し準備ができるため、慌てて引っ越しする必要もありません。

引っ越し先が近距離なら、何度かに分けて少しずつ自分たちの手で荷物を運び込むことも可能です。大きく重たい荷物のみ引っ越し業者を利用すれば、引っ越し料金もかなり節約できるのもメリットです。

フリーレントの物件を貸すオーナー側のメリット

一方、大家の立場である貸す側にとっても、フリーレントにするメリットはあります。続いては、オーナー側のメリットについてもお伝えします。

フリーレントにすることで空室を埋めやすい

フリーレント物件は初期費用を抑えられることで人気がある物件です。賃貸情報サイトなどの検索条件としてフリーレントが選択肢に含まれていることがほとんどで、貸したい物件をフリーレントにすれば、それだけ多くの人の目に触れるチャンスが広がります。物件がいつまでも空室のままでは、その間の家賃収入がまったく入ってきません。貸す側にとってみれば、多少のサービスをしても、長い目で見れば空室を埋めて長く住んでもらえたほうがお得です。集客のための広告費などに投資することを思えば、空室が埋まりやすいフリーレントにするメリットは大きいといえるでしょう。

物件自体の資産価値を下げない

空室を早く埋めたければ家賃を下げるという方法が考えられます。しかし、それでは入居者を獲得しやすくなるかもしれませんが、賃貸物件の価値そのものも下げてしまう懸念があるでしょう。特に、投資物件として売買を考えた場合、表面利回りが低下するため条件が悪くなってしまいます。物件価格に対する家賃収入があまりに低いのでは、収益物件としては旨味がないため、売値も下げざるを得ないでしょう。また、空室を埋めたいからと家賃を下げて募集すれば、早かれ遅かれ現入居者から不満が出るリスクもあります。

不公平感をなくすために入居者全員に一律で家賃を下げるのでは本末転倒です。それなら、フリーレントにして家賃無料の期間を設けたほうが八方丸く収まるのです。

フリーレントの物件を借りるときの注意点

フリーレント物件なら何が何でもお得とは一概には言い切れません。フリーレントという言葉に惑わされないよう注意が必要です。次に、フリーレントの物件を探すときに注意したい点について説明します。

そもそも数が少ない!あっても家賃が高めな可能性がある

フリーレントの物件は増えてはいるものの、全体から見ればまだまだ物件数が少なく、どこの地域でも潤沢に選べるというわけではありません。選択肢が限られることは理解しておきましょう。また、フリーレントを逆手に取って、無料期間分の家賃が回収できるよう、最初から家賃を相場よりも高めに設定している物件も見かけます。その辺のからくりをよく見極めて、初期費用や入居中に支払う家賃など、トータルで考えてお得かどうかを判断することが重要です。

中途解約すると違約金が発生することがある

フリーレント物件は、通常の契約にはない特約が含まれていることがあります。たとえば、フリーレントで家賃が無料になる期間だけ住んで、すぐに解約して退去されては困るためです。そのような不正がまかり通るわけはなく、フリーレント物件には一定の契約期間をあらかじめ定めているところが多く見られます。つまり、フリーレントを2カ月にすることを条件に、2年間は住み続けることというような契約内容です。以前のスマホなどの契約で行われていた2年縛りのようなものです。フリーレント物件で契約期間が決められている場合、それよりも早く途中解約すると違約金が発生することを理解しておきましょう。

家賃以外の共益費や仲介手数料は支払う必要がある

フリーレントといっても、実質無料になるのはあくまでも家賃だけです。たとえば、月額家賃が7万円、共益費や管理費として月に5千円、トータルで月に7万5000円かかる物件のフリーレント期間が2カ月だった場合、家賃14万円が無料になり、2カ月分の共益費や管理費の合計1万円は支払わなければなりません。また、仲介手数料無料の物件でない限り、不動産会社に支払う仲介手数料も必要です。フリーレントであっても、何から何まで無料になるわけではないことに注意が必要です。

フリーレントにしてもらう交渉は可能?

フリーレント物件ではなくても、契約時期や交渉次第ではフリーレントにしてもらえる可能性があります。人気のある物件は難しいですが、そうではない場合、家賃の減額は無理でもフリーレントなら応じてもらえるかもしれません。可能性が高いのは春秋の引っ越しシーズンが終わった後の4~7月や、10~12月が狙い目です。その頃に空室のままでは、次の引っ越しシーズンが来るまで入居が決まらないケースもあるため、貸主としてはフリーレントにしてでも早めに家賃収入を確保したいものです。フリーレントがつくならぜひ契約したいとの意思を示せば、融通をきかせてくれる場合があります。

フリーレントで借りられるトランクルームもある!

古くは事務所、店舗などでフリーレントが多く、昨今は居住用の賃貸物件も増えつつあります。そのほかにも、トランクルームでもフリーレントを適用しているところもあります。引っ越しの際は、トランクルームで収納スペースが確保できれば、収納の少ない賃貸物件も選択肢に加えられます。また、荷物が増えて手狭になり、引っ越しを検討しているなら、引っ越さずにトランクルームを借りる手もあるでしょう。「ドッとあ~るコンテナ」は短期間の利用はもちろん、長期間の契約も可能です。長期間契約なら初期費用を抑えられる特典があるため、新しい賃貸物件に住み替えるよりはかなりの節約になるでしょう。

フリーレントの仕組みを知って賢く活用しよう!

フリーレントは借りる側と貸す側にとってメリットの多い仕組みです。長く住みたい物件ならフリーレントの交渉をしてみるとよいでしょう。トランクルームにもフリーレントの物件があるため、収納スペースが手狭だと感じたときは、ぜひ利用してみてはいかがでしょうか。高額の初期費用がかかる引っ越しを考えるよりも、手っ取り早く居住スペースを増やして快適に生活できるでしょう。