特色

長崎県の県庁所在地である長崎市は、九州の西端に位置し、人口約38万人を有する長崎県最大の都市です。長崎市は日本国内でも有数の国際色豊かな都市として知られており、歴史的に西洋・中国・東南アジアなどの文化が融合した独自の都市景観と文化を形成してきました。そのため「坂の町」「港町」「異国情緒の街」といったさまざまな異名を持ち、観光客にも人気の高いエリアとなっています。 最大の特色は、江戸時代に唯一の海外交易港であった「出島」を有することで、オランダ・ポルトガルとの交流があったことに由来します。鎖国体制下でも西洋の文化や医学が入り込み、西洋建築・料理・宗教・教育など多くの影響を受けて育った歴史があります。現在も長崎市内には、出島やグラバー園、東山手洋風住宅群などの歴史的建造物が数多く残っており、観光資源としても活用されています。 また、キリスト教との深い関わりも長崎市の大きな特徴のひとつです。キリスト教の布教拠点となり、隠れキリシタンの歴史や、弾圧と信仰の物語が世界遺産「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」として登録されるなど、世界的にも注目されています。市内には浦上天主堂、大浦天主堂など歴史的価値の高い教会が多く点在し、信仰の歴史を物語っています。 地形的には、山と海に囲まれた急峻な地形が特徴で、住宅街は山の斜面に広がり「坂の町」としても有名です。この地形が独特の街並みや景観を形成しており、夜景スポットとしても全国的に知られています。稲佐山からの夜景は「世界新三大夜景」のひとつとして選ばれ、訪れる観光客を魅了します。 さらに、長崎市は港湾都市としての役割も大きく、長崎港は古くから国内外の貿易・航路の要衝となってきました。現在もクルーズ船の寄港地として人気があり、国際交流の玄関口としての機能を果たしています。また、造船業を中心とする重工業都市としても発展しており、三菱重工長崎造船所などの拠点が地域経済を支えています。 グルメの面でも個性豊かで、「長崎ちゃんぽん」「皿うどん」「トルコライス」など異文化が融合したご当地グルメが人気。さらに中華街や和華蘭文化が育んだスイーツなども観光客を惹きつけています。 このように、長崎市は歴史・文化・宗教・地形・産業・食と、さまざまな要素が絡み合った独自の魅力を放つ都市であり、長崎県を代表する観光・経済・文化の中心地として発展を続けています。

交通情報

長崎市は、県庁所在地として県内外を結ぶ交通インフラが充実しており、鉄道・路面電車・バス・道路・港・空港のすべてが網羅された都市型交通網が整備されています。山と海に囲まれた地形の中で、効率よく人とモノを動かすための工夫が凝らされており、観光にも日常の移動にも便利な環境が整っています。 鉄道では、JR長崎本線が佐賀方面と市内を結び、長崎駅がその終着駅となっています。2022年には「西九州新幹線」が武雄温泉～長崎間で開業し、新幹線の終点駅として新しくなった長崎駅ビルは、交通と商業の複合施設として注目を集めています。これにより博多駅から長崎駅まで最短1時間20分程度での移動が可能となり、福岡圏からのアクセスが格段に向上しました。 長崎市内の移動手段としては、「長崎電気軌道（通称：長崎電鉄）」の路面電車が非常に便利です。1915年の運行開始から現在に至るまで、市民や観光客の足として根強く利用されており、主要な観光地や繁華街をカバーしています。運賃は一律で分かりやすく、レトロな車両も観光の一部として親しまれています。 バス路線も充実しており、長崎バス・県営バスなどが市内全域および郊外エリアをカバー。斜面地に住宅が多い地形に対応するため、ミニバスやコミュニティバスの運行も行われており、きめ細やかな公共交通サービスが実現されています。 また、道路網については、長崎自動車道が諫早IC経由で福岡方面と接続しており、市内中心部へは長崎バイパス・川平有料道路などを使ってアクセス可能です。市内には駐車場やパークアンドライド拠点も整備されており、自家用車と公共交通の併用もスムーズに行えます。 さらに、港町ならではの「海の玄関口」としての機能も健在です。長崎港は国際・国内クルーズ船の寄港地として利用されており、五島列島や壱岐・対馬方面への高速船・フェリーも発着。観光と物流の両面で重要な役割を果たしています。 空の便については、長崎空港が大村市に位置していますが、長崎市中心部からはリムジンバスで約40～50分とアクセス良好。東京（羽田）や大阪（伊丹）、名古屋（中部）などの主要都市との直行便があり、ビジネスにも観光にも利便性の高い環境が整っています。 このように、長崎市は多様な交通手段がバランス良く整備された都市であり、観光客にも地元住民にも快適な移動が可能な街として高く評価されています。

観光情報

長崎市は、国内外から年間数百万人が訪れる九州屈指の観光都市であり、異国情緒と歴史、自然、グルメのすべてが詰まった多面的な魅力を持っています。江戸時代から明治、大正、昭和、現代に至るまでの文化と景観が市内のあちこちに残されており、まるでタイムトラベルをしているかのような街歩きが楽しめます。 代表的な観光スポットは、「グラバー園」。長崎港を見下ろす南山手の高台にあり、幕末から明治にかけて活躍したスコットランド人貿易商トーマス・グラバーの邸宅をはじめとした洋館が移築・保存されています。異国情緒あふれる庭園と海の絶景が人気で、春にはチューリップ、秋にはバラが美しく咲き誇ります。 「大浦天主堂」は日本最古の現存するキリスト教教会で、国宝にも指定されています。世界遺産「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」の構成資産としても登録されており、歴史的価値の高さと建築美を兼ね備えたスポットです。 もうひとつの観光名所は「出島」。鎖国時代、日本唯一の貿易港としてオランダ商館が置かれた人工島で、復元整備が進み、当時の様子を再現した展示や建物が見学できます。貿易品や異文化交流の資料も充実しており、子どもから大人まで学びのある観光体験ができます。 また、「平和公園」と「長崎原爆資料館」も外せません。1945年8月9日に投下された原子爆弾の被害と、そこからの復興の歩みを伝える重要な場所であり、国内外の訪問者が平和を祈って訪れる場所となっています。 自然景観では、「稲佐山」からの夜景が有名です。標高333mの山頂展望台からは長崎市内や長崎港、長崎湾が一望でき、特に夜景は「世界新三大夜景」に認定されるほどの美しさを誇ります。ロープウェイや車でもアクセスでき、デートや観光コースの定番です。 グルメにおいては、長崎ちゃんぽん・皿うどんをはじめ、中華街の本格料理、トルコライス、カステラなど、多国籍な食文化が融合した独自の味覚が楽しめます。長崎新地中華街では、春節祭などのイベントも開催され、観光とグルメが同時に味わえる魅力的なエリアです。 このように、長崎市は歴史と文化、自然とグルメが絶妙に交差する観光都市であり、国内外から高い評価を受ける魅力あふれる目的地です。

歴史や変貌

長崎市の歴史は、16世紀にポルトガル人がこの地に来航したことから大きく動き出します。1571年、ポルトガル商人の要請により大村純忠が長崎港を開港し、それ以来、長崎は日本と西洋世界をつなぐ「国際都市」として発展を遂げていきました。 江戸時代に入ると鎖国政策が始まりますが、唯一例外的に認められた貿易港が「出島」でした。オランダ商館が置かれ、長崎は西洋医学、天文学、絵画などの「蘭学」が伝わる窓口となり、日本の近代化に貢献しました。出島から伝わった文化・技術は、長崎の地に根付き、今なおその名残が街並みや文化の中に色濃く残っています。 キリスト教との関係も深く、16世紀末から17世紀にかけて布教活動が活発化。しかし江戸幕府による弾圧で「隠れキリシタン」が誕生します。こうした迫害と信仰の歴史は、世界文化遺産「潜伏キリシタン関連遺産」として認定されており、長崎市の宗教的・文化的意義を物語っています。 幕末から明治にかけては、開国により再び国際都市としての役割を担います。グラバー商会の設立、外国人居留地の整備、西洋建築の導入など、他都市に先駆けた近代化が進行。三菱長崎造船所の創設など、重工業都市としても歩みを進めていきました。 そして、第二次世界大戦中の1945年8月9日、長崎市は世界で2番目の被爆都市となります。浦上地区に原爆が投下され、多くの犠牲を出しました。この悲劇を経て、長崎は「平和都市」としての再出発を果たします。被爆の記憶を次世代へ語り継ぐために、平和公園や原爆資料館などが整備され、世界に向けて平和のメッセージを発信し続けています。 戦後復興とともに、長崎市は観光都市、国際都市としての歩みを再開。文化都市としても高く評価され、数々の国際交流イベントや祭りが開催されています。特に毎年冬に行われる「長崎ランタンフェスティバル」は、長崎の中華文化の象徴として国内外から観光客を集めています。 このように長崎市は、戦国時代の貿易港から始まり、鎖国下の唯一の国際都市、近代日本の玄関口、被爆都市、平和の象徴として、常に日本の歴史の重要な転換点に立ち続けてきた都市です。今なおその多層的な歴史が街に息づき、未来へとつながる新たな歩みを続けています。